「何が起こっている?」というタイトルですが、脳がどう変化しているか等の学術的な話じゃありません。
「発達障害の特殊能力」みたいな扱い方をされる過集中について、「過集中真っ只中の本人はどんな体感なの?」「周りの人が中断しても大丈夫なの?」など、少し現象的な話をしたいと思います。
ただ、発達障害ごとに体感って違うんじゃないか、という推測もあるので「私の場合は」の注意書きも付けたいし、ちょっと違う人の体感も教えてくれると嬉しいです。
また、過集中発達障害の扱い方に悩んでいる親御さんや上司の方のお役にも立てればいいな。
過集中はアスリートの「ゾーン」と似ている。違うところは?

「過集中」はその名の通り「集中しすぎる」という状態で、似た現象にはアスリートの「ゾーン」があるといわれています。
「集中すべきもの」と「自分」以外にこの世にはなにもないような体感といえるでしょうか。精神のいる世界と肉体のいる世界が別になっている感じ、ともいえます。
聞けば、プロのアスリートは意識して「ゾーン」に入ることができるとか。ここが発達障害の過集中とはちょっと違うところです。
「過集中」は「いつ、なにに」を基本的に選べません。
「掃除に過集中できれば儲けもの」と掃除を始め、明日着る衣服の毛玉を取り始めたらそこでスイッチが入ってしまい、手持ちの衣服の毛玉を全部取って力尽き、部屋は汚いままという惨事もよく起きます。
過集中最大のデメリットとは?できれば起こらないほうが良い理由

アスリートの「ゾーン」と似ている、とはかっこいい響きですが、どっこい過集中にはデメリットが多いと思うんです。
最大のデメリットは、エネルギーを無計画に使いすぎること。私はこれを「ドーパミンの前借り」と呼んでいます。
過集中に陥ると、当然普通に過ごしているよりエネルギーを多く使うことになります。そして当人はどのくらい使うか、いつまで使うかをコントロールできません。
結果、過集中の後は使いすぎたエネルギーを貯めるため廃人状態になってしまうことも多く、その期間のロスを考えれば、「コツコツやったほうが数倍マシだった」ことになります。
そんなアスリート、ちっともかっこよくないですよね。
過集中時の本人の体感は?敵は尿意と腰痛

さて、過集中の真っ最中にいるADHD本人の体感はどんなものなのでしょうか。
私が過集中になるのは文章を作っている時が多いので、それに則って説明しますと、
変な姿勢で座っているので腰が痛いことも、限界なくらいトイレに行きたいことも、夕方なので部屋がどんどん暗くなっていることも、肉体のある遠いところで起こっているけど、一応感知してはいます。
でも今この「私と指とキーボード」だけの世界から出ていったらもう戻れないかもしれないので、出て行かない!
という感じ。一応なにやら漏らしたことはない。ギックリ腰になったことはある。
人に呼ばれているのは分かっていることが多いですが、返事をする余地を捻出できないくらいゾーンに入っています。
さすがに呼び続けられたら仕方がないので「精神の世界」からしぶしぶ出ていきますが、すごい残念でもったいない気持ちになってしまう。
そう、過集中を中断されたADHDはとても機嫌が悪くなるのです。
なぜなら、またあの絶好調に戻るにはとてつもない労力がかかるから。
ADHDが過集中を壊さないでと感じる理由
ADHDは過集中に入るとそれを中断されたくないと感じるのです。大きなデメリットがあり、なるべく起こらないほうが良いと分かっているのにです。
それはたぶん、過集中真っ最中の「絶好調」感覚に依存しているからだと思います。
過集中に入るかどうかは意志のコントロールと関係ないため、一度壊されると再び入れるとは限りません。
ADHDの過集中が中断されるのは、例えると会社から帰ってお風呂に入ったのに、一杯やり始めたのにオフィスに呼び戻されるようなことです。
「はい、また元の環境に戻ってもいいよ」と解放されても、モードを再び切り替えるには相当の労力がかかるし、結局戻れないことも多いでしょう。
だから、ADHDは過集中を中断しないで欲しいと感じるのです。
たとえ腹の虫が大音量で鳴いていても、明らかに尿意が限界で前後に揺れていても放っておいてほしい。
もちろん、中断する側の正当な理由もあります。これはあくまで「なぜ当人はそう感じるか」の説明です。
過集中を壊されると非常に大きなストレスが溜まりますが、ずっと壊されなければ前借りによる廃人状態が待っている……本当に悩ましい問題です。
でも、ADHD側も悪いんですよ

もし、何かのきっかけで別の世界に行ってしまう人がいたら、周りの人は困っちゃいますよね。
周りにだって「お風呂のお湯抜くわよ」とか「おととい締め切りの書類が出てない」とか「通れないからどいて」とかいろいろ理由はあるんですから。
過集中に入るかをコントロールはできませんが、経験上「入りやすい」と分かっている状況はあるはずです。
分かっているなら終了予定時間を決めた上で、以前紹介した「そろそろ時間ですよ」を音で教えてくれるアプリ等を活用し、もし過集中に入っても自らを起こす対策もあるでしょう。中断の予測がついているので、人に中断されるより楽なはずです。
あと締め切りの書類等はちゃんと出して「周りがどうしても話しかける理由」を少なくしておくべきですよね。
親御さんや上司の方は「当人が過集中に入りやすい状況・作業」を把握し、可能であればその前に必要なコミュニケーションを取っておくと良いと思います。
私は在宅仕事の独身なのでこの件は問題ありません。羨ましいでしょう! でもギックリ腰などピンチのときに助けてくれる人もいないので、もしSNSを更新しなくなったら「あ・・・、あの人残念だけどそういうことか」と、どうか心で花をたむけて下さい。