我が家にて、最も髪を切りに行く頻度が高いオシャレさんは意外にも父なのです。
(※今回ルッキズムリテラシー的にアウトなので気になる方は読まないで下さい<(_ _)>)
しかし、父の後頭部の頭髪はやや幽けき密度となっているため、私たちは父の床屋通いを「床屋さんを困らせに行く」と呼んでいます。
(類語として「無駄にハサミの音をさせに行く」等がある)
実際床屋さんはちょっと困っているのか、切り終わったあと正面の鏡と鏡合わせで後頭部を確認させるとき、
「シャッシャッ!!」
と、素早く左右に手持ちの鏡を動かし、パッと後ろにしまって「……いかがでしょうか」と訊くのだそうです。
父「いかがもなにも、見えない」
それでも父には父の「髪伸びすぎ」の基準があるらしく、気になれば何をおいても床屋さんに通います。
とはいえ2023年、国立新美術館で開催されたルーヴル美術館展を「俺床屋に行くから」と途中で離脱したときはたまげてしまいました。

「そこに、そこに【パオロとフランチェスカ】があるの見ないの⁈嘘でしょう…【パオロとフランチェスカ】をおいて床屋さんを困らせに行くの?」
と、必死に身振り手振りで(展示室ではお静かに)止めたのですが、それでも父は床屋さんを困らせに行ってしまったのです……
その後ろ姿の頭髪はやはり幽けき密度なのだけど、父には父の「お洒落の矜持」があるのだと思われます。
たとえ「また床屋さんを困らせに行ってる」という揶揄に「ルーヴル美術館展を途中で出て行ったんだよ⁈信じられる?」が永遠にネチネチ追加されるとしても…