その夜、ホテルAurupaにて
近くのバッカルでいそいそとビールを買い込む。せっかくだから日本ではお目にかからないトルコビールを、店に置いてある分制覇してやる!!と、調子に乗った結果・・・
「トイレに行きたい……」
丑三つ時、尿意で目覚めた私はもう15分も逡巡している。トイレは外だ
トイレに行くのがめんどくさい私
いやいやただ靴をきちんと履いてたてつけの悪い鍵を開け、暗い踊り場を通って、スムーズなどと言う無粋な近代技術とは程遠いトイレの鍵を開け、用を足し、また踊り場を通ってたてつけの悪い鍵を開け、閉め、寝ればいいでしょ?
・・・めんどくせぇ~~~~!!
死ぬほどめんどくせぇ!という理由のために20分逡巡している私の目に、調子に乗って飲み散らかした、空っぽのビール500ml缶が映る
………いや、それはダメだろ。そもそもそういう構造になってないだろ。……じゃなくて人としてダメなんだよ!女として以前に人として!
めんどくせぇがしょうがねぇ、と布団から起き出した私の目に、シャワー付きバスタブが映る
………だからそれはダメなんだってば!構造をクリアしたってダメなの!「学校のプールより人に迷惑をかけない」とかは言い訳にならないの!!
・・・今回は人としての道を外さずに済みました。しかし次回は自信がありません。てかもうAurupaは行かねぇよ!
エピローグ デザイン泥棒とホスト
次の日、私は約束した夕方に『おばさんの店』へ向かった
私が行くと、同時くらいに先日の若者が、サイズ調整した衣装を持って現れる。おばさんは
「さぁ~!あなたの衣装ができたわよ!一日で私が直したんだから!大変だったんだから!」みたいな事を言うが・・・
おばさんごめん。昨日私は、あなたが身内だと言い張っている縫い子の工房を訪問して、そこで私が選んだ衣装がお直しされているのを見ているの
縫い子君と私がもう取引を交わしているのはおばさんにはナイショなので、お互い知らない人の振りをしている。……が、どうしても目が会うと口元がニヤニヤしてしまう
取引の終わったおばさんは、私がベラでうっかり散財してしまったことを知ると「チッッ!」と盛大に舌打ちして
「これからベラのデザインがほしいときは、私にピシッッ!とEメールを送りなさい。そしたらあなたのために同じデザインを縫って、ピシッッッ!と送るから!」
という話を4回繰り返していたが、その『ピシッッ!』の発音が気になって0,5回分くらいしか聞いていなかった。……てかおばさんごめん。あなたに会うのはこれで最後だと思うのです
話が興に乗ったおばさんは携帯電話を取り出して、今まで自分がデザインしたという衣装の写メを次々と見せ始めた
買い物の終わってしまった私は写メを見つつも「早く帰ってビールを浴びたいなぁ…」と、笑顔のまま上の空だったせいか、おばさんは背後にぴったりくっつ(かされ)ていた縫い子のイケメンに意見を求め始める
「これも私がデザインした衣装よね!」
「素敵ですマダム」
「こっちもそうよね!これは韓国の有名なダンサーのものよね!」
「まったくでございますマダム」
「このデザインは苦労したわよねぇ!」
「おっしゃるとおりでございますマダム」
・・・わたしは苦労しているトルコ男を生まれて初めて見た
おばさんの店から逃れ、これで私の一回目買い付けは大体終了です。その後も何度かイスタンブールには行きましたがこの店の前は顔を背けながら走り抜けています
10年あまりの月日が経った今この買い付けを思うと、恥かしマックスな気持ちと、まぁ何も知らないまま行った1回目にしちゃなかなかじゃない?という気持ちの混合であります
mixiにはイスタンブール買い付けラストである7回目の記録も残されていましたので、次回のmixi引っ越し記事はそれになるでしょう。お読みいただいてありがとうございました