1日目後半
ペラパラスホテルの前でタクシーを降り、向かいを見ればそこは目的地ホテルインカ
チェックインしたホテルでいびられる
さっそくチェックインしようとしてみると「ないよ。君の部屋は取れてないよ」なにぃ!?
そんな!!確かに拙いトルコ語だけど、ちゃんと復唱してもらって予約したのに!!
しかしフロントの半端イケメンの目が微妙に笑っているような気がする。試しに訊いてみる。
「朝ごはんは付いている?」「付いてるよ。君はソコ」
彼がニヤニヤしながら指差したのは外の路上だった。畜生ジョークかよ!!
またか!また私なのか!ドンドルマ屋に毎度からかわれるのも私。バイト先のトルコ料理屋オーナーのホラに騙されるのもいつも私。支店店長に延々セクハラされるのも私……!今度は宿無しジョークかよ!
そう、私は外国人の無愛想には当たらないけど悪質ジョークにはよく当たるタイプのアジア人
(ちなみによく聞いてみると彼はトルコ人ではなくクルド人だそうで、クルド人差別が問題のトルコですが現場レベルではわりとこういう目に遭う)
君は僻地のアジア人をからかって楽しいかもしれないけど、24時間一睡もしてない私には楽しくもなんともない
私だって生きてるんだよ!虫ケラじゃないんだよクソめ!という顔をしていると、少しは悪いと思ったのか最上階の部屋に案内される。でも景色の三分の二がペラパラス。これを景観とは認めない!!
まぁともかく無事には着いたので、今回の旅のアドバイザー、Nさんの携帯に電話する
本当は彼にガイドして欲しかったけど、人気ガイドの彼は多忙の為、同僚を紹介してくれたり、アドバイスをしてくれる、レコードで指令を聞いた後に爆発するアレみたいな役目をしてくれている
彼に今回のガイドさんと繋がる算段をしてもらい、惜しみながら電話を切ると、三分後にまた彼からコールが帰ってきた
「僕の担当ツアーは今日の夕方で終わるので、僕の家で奥さんと子供と御飯を一緒に食べませんか?」行きますとも!
Nさん一家にもてなしていただく
ガイド本やブログでよく読んだトルコ的もてなしに早速当たってしまったわ♪♪と、待ち合わせのタクシム広場へ気持ちだけはスキップで向かう(デブだから)
マクドナルドの前に立っていると、突然私の前にパトカーが急停車した。なぬ!?私の横にテレビカメラとクルーが現れる。なんと!!そして手錠をはめられた男がパトカーに目の前で押し込められた!モザイクナシだ!
スゲェ!リアル逮捕劇だぜ!と身を乗り出した時「あやめさん~、お久しぶり~」と、Nさんがやってきた。ええ~…もう来たの~……逮捕見たいのに~…
僕の家はこっちです、とNさんは導いてくれるが、「あぁ…はぃ…」心はすっかり現場に置いてきてしまっている。恩知らずめ!
Nさんは私の好物を聞きながら市場を色々回ってくれる。日本人にもてなされるのすらビクビクな私は、彼の荷物が重くなるたび恐縮してしまう。最後にケーキ屋に寄った彼は、『余り甘くないものがいいですよね』といいながら、真っ黒な小山のようなものをいくつか買っていた。あんまり甘くない……ようには見えないが……
彼のキュートな奥様は妊娠9ヶ月、娘ちゃんは二歳半だった。黒目がちで巻き毛、本当に天使そのままのような子。早速私が訪問した事を、窓から通りを挟んだ建物のおばあさんに叫んで報告していた。「KAYAMEが来たの!」君の命名ならKAYAMEだろうがなんだろうがいいさ…!
食事はスープ・サラダ・パン、スズキのグリルと続いた。奥さんはホントに料理上手だ。今思えばさぞかし迷惑だったろうに・・・!
トルコの蟹江敬三
食後はドラマを見ながらチャイタイム。蟹江敬三そっくりの俳優が父親役の、『渡る世間は鬼ばかり』みたいなドラマだ。特徴は常に皆泣いていること
娘達の誰かの夫に問題があるといっては母と娘は泣き、蟹江敬三は難しい顔をする
それが解決すれば別の娘が未婚の妊娠をして母と娘たちは泣き、蟹江敬三は難しい顔をする
本家『渡る世間』ならば一月かけるこの内容を、ヤツラは45分でやってのけるのだ。時の流れは速く悲しいことばかり
そろそろおいとましようかな、などと思った頃にさっきの小山登場。やはりプロフィットロールであった。最初の一つ目はホントにおいしい。チョコがけ山の中にシュークリームが六つ入ってるのが一人分なのだけど、一つ目はホントにおいしいのよ
ちなみに奥様はチャイの名手だった。私もレストランで散々飲んだが、本当に一味も二味も違うチャイで、ついつい限界以上に飲んでしまった。賛辞を伝え、さぁ本当においとましようかな、とした矢先、天使ダフネがまたチャイを薦めてくれる。……さっきのチャイが喉まで一杯だけど、君のためなら飲むさ…!
こんどこそ本当に本当においとましようとすると、天使ダフネが「ギドメ~(行かないで)」と繰り返しながら後を追ってきた
行かないよ!私もここんちの子になるよ!というわけにはいかないので諭すと、私の手にキスして額に当て、祈ってくれる。カッコいいぜダフネ!と思ったが、あとあと聞いてみると、それはトルコでお年寄りに捧げる敬意の表れらしい。ダフネ……賢い子…!(白目)