さて、3月30日まで開催の大阪市立東洋陶磁美術館「中国陶磁・至宝の競艶」展、レポは後半へと移ります。

美術館の展示室・展示品があまりにも充実していると、鑑賞者はなぜかグロッキーになってしまうのですが、そこはさすが東洋陶磁美術館さん。
重々わかっていらっしゃるらしく、館内には休憩スペースが充実しています。上の画像は階段エリアですが、休憩スペースでもこういった景色を見ながら美に消耗したエネルギーを回復できるので、とってもありがたいです。
至宝再興―明時代“空白期”の景徳鎮磁器
さて、鑑賞は展示室7「至宝再興―明時代“空白期”の景徳鎮磁器」へ。
「空白期」とは中国・明時代の第6~8代の皇帝、正統帝・景泰帝・天順帝が帝位にあった時代のことです。ちなみに正統帝と天順帝は同一人物で、景泰帝はその弟。
兄弟で帝位を取り合っていたテンヤワンヤの時代だからかは分かりませんが、この時代の官窯の焼き物には銘款が記されなかったそうです。
そのため「この期間は陶磁器の歴史がよくわかんないよ」ということで「空白期」と呼ばれています。
謎に包まれた空白期の景徳鎮磁器がたくさんある、ワクワクの部屋と思ってください。

「紅緑彩」とある通り、紅彩と緑彩を釉薬の上に絵付けしている、目にも鮮やかな配色の梅瓶。
頸部には雷文(ラーメン丼によくあるグルグル)を2つ繋げて配してあり、その間には梵字が入っています。雷文の間に梵字を入れるのはとても珍しいデザインだそう。
胴の線の上下に蓮唐草文を配してありますが、上下でデザインを変えているのもお洒落なところです。
至宝競艶―上海博物館×大阪市立東洋陶磁美術館
さて、展示室9・10・11「至宝競艶―上海博物館×大阪市立東洋陶磁美術館」では、上海博物館と主に安宅コレクションの、珠玉の中国陶磁が並びます。

一度見たら忘れない、でっかい六弁花文メダリオンが印象的な「三彩貼花 宝相華文 壺」
ふくよかなフォルムの壺に流れる三彩だけでも美しいですが、この貼花があるかどうかで表情は全く変わってきます。
流れやすい鉛釉によるおおらかな装飾が、この存在感ある貼花でビシッと決まると思うのです。最初にこれを思いついた人はセンスの権化です。

私の大好きな磁州窯系 搔落牡丹文。素地に白い土で化粧を施した後に黒釉をかけ、牡丹の文様が残るように周りの黒釉を搔き落とす技法です。
この作品は搔き落とした部分にもう一度白泥を塗りこめてあるそうで、黒白部分の凹凸が目立たなくなっています。
下の搔落技法の瓶と比べるとよく分かるかも。こちらは搔き落とした部分よりも牡丹文が浮き出ていますよね。

解説文によれば、こちらも素地に白化粧を施して黒釉を掛け、牡丹文が出るよう搔き落とし、透明釉をかけて焼くのですが、その後緑釉を掛けてもう一度焼いているそう。
黒と緑の親和性が高く、牡丹文の奥行きが深まったように見えます。

神々しい龍が目を引くこちらは、白磁に歴史的な定評がある定窯のもの。上海博物館所蔵の「一級文物」で、日本でいう国宝にあたるものです。
純白というよりほんのちょっとアイボリーなのですが、それにより文様の境に影ができ、雲龍文をくっきりと際立たせています。それでも展示室の中ではハッとするほど白い、輝きを放つ逸品でした。

こちらは安宅コレクションより、日本の国宝「飛青磁 花生」です。
「飛青磁(とびせいじ)」とは鉄釉を青磁に散らして、その部分を鉄分により褐色に装飾する技法のこと。(参考↓)
展示室10のパネルによると、
古来、青磁を見るには、「秋の晴れた日の午前10時頃、北向きの部屋で障子一枚へだてたほどの日の光で」といわれている。
とのことで、なんと「飛青磁 花生」の展示ケースの上側はガラスになっていて、日の光が入るよう工夫されていました・・・!
この柔らかでまろみのある色を堪能できるのも、自然採光展示のおかげなのです。

釉薬の下に銅を含む顔料で絵付けをし、赤色の装飾を施す「釉裏紅」。明の初代皇帝 洪武帝の時代は釉裏紅が流行したようです。
一説には、青花に使われていたコバルトが輸入できなくなってしまい(明時代のゴタゴタのせいでしょうか)、仕方なく国内のコバルトを使ったらあんまり綺麗にできなかったので、「じゃあもう赤作れ!赤!」と方向転換して生まれたのが釉裏紅だとか。瓢箪から駒とはこのことですね。

流れやすい鉛釉が流れないよう、盛り上げたラインで堰を作り、その中へ釉薬を塗り分ける技法を「法花(ほうか)」といいます。
同じ鉛釉を使う「唐三彩」が「流れるから綺麗」なのに対し、流れないよう綺麗に作る「法花」。対照的なコンセプトが面白いですよね。
そしてこのモコモコした花鳥文がなんとも乙女心をくすぐるのであります。

柔和な表情、ふくよかなお顔立ち、グッと深く作られたドレープが美しい、徳化窯の「白磁観音像」
解説文と図録によれば、この、象牙のように柔らかい色合いが徳化窯の白磁の特徴だそう。徳化窯の白磁は日用品から儀礼用の器までとてもバリエーションが豊かで、なかでも白磁の彫像は評判が高いのだそうです。
しかも、銘のある「何朝宗(かちょうそう)」さんは特に名高い工匠なんですって。トップオブトップの芸術品を目にしているわけですね。
鑑賞後はぜひ併設のカフェ「café KITONARI」へ

大阪市立東洋陶磁美術館には併設のカフェ「café KITONARI」があり、スイーツや軽食をいただけます。
今回はこちらで人気No.1のデザート、「木葉天目チョコレートムース」を食べてきました!
その記録は松花堂弁当ばっかり食べる姉妹ブログ「美味是口福―おかずちょこちょこ飯が好き!」で更新しましたので、ぜひご覧ください。
この後、旅は個人的なクライマックス「夕暮れの新淀川大橋を歩いて渡りたい!」に続くのですが、すみません、その前に1記事、「DIC川村記念美術館」訪問レポを挟ませてください。なぜなら美術館ごと終わってしまうから・・・!