さて一路大阪へ向かい、魔境といわれる梅田駅を運良くスムーズにパスして、やってきたのは中之島エリア。
大阪中之島美術館など文化施設の多いこの付近は、素晴らしい近代建築を見られる、歩いているだけで美術鑑賞ができるエリアでもあります。
中之島エリアの近代建築と大阪市立東洋陶磁美術館

建物の一部が重要文化財でもある「大阪府立中之島図書館」。正面玄関はギリシア神殿をイメージしており、外観はルネッサンス様式、内観はバロック様式の建築なんだそうです。ワクワクしますね!
図書館を利用しない人でも入っていいのでしょうか。もしそうなら次はぜひ中も見てみたいです!

国の重要文化財である「大阪市中央公会堂」。大正7年完成の、明るいオレンジが映えるネオルネッサンス様式の建物です。
「展示室」と「自由見学エリア」は見学可能だとか。その他の場所も、ガイドツアー等に申し込むと見学できるそうです。夜にはライトアップもあるそう!素敵ですね。
さて、ついに私の聖地が見えてまいりました。

「大阪市立東洋陶磁美術館」です。
こちらの美術館は、安宅産業株式会社会長であった安宅英一氏収集の陶磁器「安宅コレクション」と、経済学博士李秉昌(イ・ビョンチャン)氏寄贈の韓国・中国陶磁を収蔵する美術館。2024年4月にリニューアルオープンしています。
リニューアル工事期間中には、六本木の泉屋博古館東京で安宅コレクションの展示が行われていたので、ご覧になった関東圏の方もいるでしょう。
私にとっても、生まれて初めて同じ展覧会の前期と後期に通い「私このままじゃ陶磁器に沼るな…」と危機感を覚えた思い出深い展示でもあります。私よ君はいま陶磁器のために新幹線に乗るようになったよ。

今回の「中国陶磁・至宝の競艶―上海博物館×大阪市立東洋陶磁美術館」は、大阪市と上海市の友好都市提携50周年を記念した展示です。
安宅コレクション・李秉昌コレクションと共に、上海美術館から出品された50件の中国陶磁を鑑賞できます。
そのうち22件は日本初公開、さらにそのうち19件は海外初公開というのですから、本当にこのチャンスを逃したら一生見れないかもしれない貴重な美術品揃いです。
さらにその多くが写真撮影可能!スマホの中にちょっとした図録ができてしまいます。
3月30日まで開催しているこちらの展示、美術館の見どころと画像の一部をご紹介しますので、ぜひお出かけの参考になさって下さい。
油滴天目触り放題!のデジタルおもちゃと美しい鼻煙壺たち
東洋陶磁美術館に13ある展示室の中で、もっともエキサイトできる設備があるのはこちら。
展示室12(映像ルーム)【体感!国宝「油滴天目茶碗」】です。

このボックスに近づくと、下のような画面に切り替わります。

ボックスの中には3D再現した油滴天目のレプリカが入っており、ボックスの中に腕を入れて動かすと映像の中の油滴天目もそっくりそのままに動くのです・・・!
幻想的な見込はもちろん、日頃はなかなか見られない高台の裏まで見放題!肉眼ではとらえられない細部まで再現されているそうですよ。
油滴天目について360度詳しく観察できるのはもちろん、国宝油滴天目が未来永劫しないであろう動きもさせられて最高でした。
同じ部屋には中国の嗅ぎたばこ入れ「鼻煙壺」の展示も。

小さく精巧で美しいものが大好きな人なら、いくらでも居れる空間です。
室内には鼻煙壺の材質や技法の違い、文様についての解説ボードもあり勉強になります。

ちなみに、鼻煙壺がお好きな方はこちらの記事もぜひご覧ください。
シックに見えて豪華絢爛 上海博物館の至宝たち
第1展示室のテーマは「至宝精華―上海博物館の至宝」。展示作品のごく一部をご紹介します。

ポスターにもピックアップされている「緑地粉彩八吉祥文瓶」。鮮やかなブルーが目を引きますね。
緑釉をベースに蓮花文、八宝文等を粉彩で施したこちらの作品。こういった瓶は「賁巴(ほんは)瓶」とも呼ばれており、チベット仏教とゆかりの深いものだそうです。

私が「染付の赤バージョン」という覚え方をしている釉裏紅。こちらの作品は上部から下部まで回文、如意頭文、蓮弁文…と文様が10層もあります。
さらに、横方向は12面となっており、胴部分には菊、牡丹、百合など12組の花卉文が連なっています。ゴージャスですね!

ポップなターコイズブルーがどこか現代的でもあるこの作品。トルコ石(ターコイズ)をイメージして松石緑釉を施したものだそうです。
胴には唐草文、裾には蓮弁文を配しながら、全体を一色で仕上げるこの感じ!思い切りがいいというか一周まわってハイセンスというか…確かにトルコ石を彫ったみたいです。
自然の息吹が残るエレガンス 安宅コレクションの韓国陶磁
韓国陶磁ってちょっと土着的というか、自然の持つ色や質感を映しているのに洗練もされている、不思議な魅力があると思います。

こちらは象嵌で折枝文をあらわした三耳壺。折枝文による花模様も3面についているそう。
口縁の如意頭文がフリルを思わせる、たおやかで可愛らしい一品です。

象嵌とは絵や模様を描くのではなく、材料を埋め込んで絵のように見せる技法。こちらは逆象嵌技法で造られているそうです。
つまり、蓮唐草文を埋め込んでいるのではなく、蓮唐草文の「背景を埋め込んでいる」ということですかね。とても手の込んだ作品です。

鉄絵青磁とは、鉄分を含む絵具で文様を描き、その上から青磁釉をかけて焼く陶磁器のこと。上の画像のような黒褐色の文様になるのが特徴です。
私は中国・磁州窯の搔落牡丹文が大好きなんですが、ちょっと似てますよね。↓参考

…いやごめんなさいこれはあんまり似てない(もっと似てる搔落牡丹文の写真がなかった)。雰囲気でお分かりいただけるととっても嬉しい。
でもこうして見るとやっぱり韓国陶磁は、自然の質感を残した美しさというか、人の世界の美しさへ加工され過ぎていないというか、なんともいえない温かみやまろみを感じるんですよね。
さて、大阪市立東洋陶磁美術館「中国陶磁・至宝の競艶」レポートは後半へ続きます。
その前に1記事だけ、3月16日まで開催されている東京国立博物館「大覚寺展」の簡単なレポートを挟ませてください。なぜなら展示が終わってしまうから・・・!