・・・つまり結局おいしくないってこと?【イギリスはおいしい 林 望】

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イギリスの食べ物の味を表現するのは難しい。経験上、一口食べて「マズっっ!!」と吐き出すほどまずいものは基本ない。ただ、静かに食べるのをやめて眉間のしわを揉むような味のものにはよく遭遇する。と思う。

まずくはないけど、おいしくないのだ。それも自分の国で食べつけない味だからとかではなく、全人類のDNAにインプットされている「食べ物をこうするとおいしくない」のツボを的確についてくる。

私は一日三食可能な限りおいしいものを食べたいと思う人間だ。就職する気はさらさらなく、ただ一生の食生活のために調理師学校で免許をとったほど食い意地が張っている。次のイギリス旅行ではせめてひもじくない旅程を送りたい。その期待を持って選んだ本が今回ご紹介する「イギリスはおいしい」である。

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かばってもまずいもんはまずい

それにしても最後の記事が8月とは。8月終わりに「夏が終わるー」とフリーズしてしまい、9月には「秋は短い」とフリーズしてしまい年末には「年末だ」と、正月には「正月だ」とフリーズして、2月には「バレンタイン・・・あっでも関係ない!」とフリーズから解けました。

さて、先日ツイッターでこういうツイートをさせていただいた。

このほかに「ちゃんと探してちゃんとしたところに行けばおいしいのに情弱がw」論も見かけるが、投げた石が当たった店に入っても何もかもおいしい国がある中、ちゃんと探さなければいけない時点で「食事のおいしい国ランキング」には入れられないのである。

しかし観光経験はあれど居住経験はない私、イギリスの食に関する経験値が少ないことは認めざるを得ない。イギリスにはまたぜひ行きたいこともあるし、ここらでおいしいものリサーチをしておいたほうがいいだろう。

この「イギリスはおいしい」は、ケンブリッジ大学・オックスフォード大学の訪問研究員としてイギリスに居住した林氏がローカルな食についてエッセイ風にレポートした本である。いかにも我々観光客が知り得ないイギリスのおいしいメニューの知識が得られそうではないですか。

・・・思ってたんと・・・

しかし「イギリスはおいしい」の第1章「塩はふるふる野菜は茹でる」は、まずいかおいしくないか飲み込めないものの話から始まる。

・・・いや、そういう構成もあるだろう。これで掴んでおいて「しかし!」とおいしいものの話が始まるに違いない。

林氏も「もう(この描写は)いい加減にしよう」「積極的においしいものもある」と述べておいしいものの話に入ろうとするのだが、そのおいしいものトップバッターがりんごなのである。

りんごか・・・。私はもっと、夕食を泣く泣く残した結果シードルとポテトチップで飢えを凌ぐ旅程を送らずに済むメニューの情報が欲しいのだが・・・

もちろん食材系でなく、メニューとしておいしいものの紹介もある。しかし林氏の文章は、おいしいものの話をしているはずなのに連想的にまたまずいものの話に戻ってしまったり、「この食材はこんなにおいしいのになんでイギリス人はまずくして食べちゃうんだろう」等、グルメガイドとしては期待薄な表現にさ迷い込んでしまうのである。

この本思ってたのと違うな・・・と気付き始めた私は、紹介されているメニューと描写されている味の統計をざっととってみることにした。結果は以下のようなものである。

  • メニュー・食材総計(「1コース」も含む) 44
  • まずい!! 19
  • 許せる・まずくはない 3
  • そこそこ 4
  • おいしい 7
  • 本当に美味!! 5
  • 味について記述なし 6

・・・本の題名の変更を要求したい。ちなみに「本当に美味!」に入った5メニューは一人の音楽家が作ったもので、それはその人がすごい料理がうまいんじゃ・・・という結論に至るしかないのである。

ちなみに「そこそこ」「おいしい」ランクの食はどちらかというとメニューより食材系が目立ったことも報告したい。

しかし、イギリスの静かで頑固で皮肉でおおらかな空気を存分に楽しむ本としては非常におすすめできる一冊である。芝居掛かった変人奇人に翻弄される林氏のイギリス生活の描写は、あの地への思慕を感じて羨ましく、微笑ましい。

袖触れ合うも多生の縁と、世間話をしただけの家族の結婚式に招かれ細やかで優しいもてなしを受ける場面などはとても心を打たれる。(が、ここでいただいたメニューの味の感想を林氏は描写しないのである・・・)

最後の章ではイギリスの家庭料理を学ぶために主婦の女性の夕食作りに付いてレクチャーを受ける場面もあるが、この章の結論は

たしかに、ホワイトソースは粉っぽかったし、ローストベーコンは塩辛いばかりで、茹ですぎた野菜には特に掬すべき味もなかったが、それでもなお、イギリスの食卓には、私たちの国ではもうとうの昔に失われてしまった、なにか美しい「あじわい」が残っているのであった。

といううまい感じで締められている。つまり・・・そういう趣旨の本なのである。

私がこの本から学んだのは、次のイギリス滞在ではスーパーで一番美味しそうな食材を買って自分で料理しイギリス人シェフには触らせるな、ということであった。

おまけ

数年前のクリスマスにロンドンへ旅行した際の食事写真がいくつか見つかったので感想とともに紹介したいと思う。

到着当日ホテルのレストランで食べたチキンカレー。空腹なのに食べ進められないという不思議体験の洗礼を受ける。

「イギリスはおいしい」的にいうとソフィスティケイティッドなフィッシュ&チップス。不可はなし。しかし可もなし。衣が口内を傷つける。ミント味のマッシュビーンズに衝撃を受ける、が食べつけない味を「おいしくない」と表現するのは正しくない。無念。

パブで食べたソーセージとグレイビーソース、マッシュポテト。これは普通においしい。ただ火入れが長いのかソーセージの皮が鎧のようであった。

ひもじい日々に耐えかねイタリアンに逃げる。見たままの雑ながらハズレのない味。この国ではパンの類はおおむねパサパサである。続いていた禁酒もこの旅行で断念した。液体も貴重なカロリー源だし酒のつまみとしてなら塩味が付いていればいいのだ。

先に言っておくがこの焼きそばの写真は食べかけではない。空港のレストランだから仕方がないのかもしれないが街中にもある有名な日本食料理チェーンである。ビジュアルで味の様子は十分お伝えできたと思うが補足すると、おととい茹でたパスタで昨日焼きそばを作って30分強火で炒め、今日までラップをかけずに放っておくと再現できると思う。

ロンドンではクリスマスに営業している店はほとんどなくレストランやスーパーも閉まってしまうため、クリスマスディナーは日本食材店で調達しておいたペヤングになってしまったのだがかえって幸せであった。己の境遇に感謝するという点では大変実りのあるロンドン旅行だったのかもしれない。

よろしければよろしくです 
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