せんせいさようなら みなさんさようなら

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散文

なにげない日常の中で、ふと死を予感することはあるだろうか。私の場合、それは性格が暗いからだ

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あるものはいつかなくなる

きっかけはダロワイヨ銀座店の閉店だった

三越銀座店のダロワイヨで買い物をした際、店員さんが閉店の事実を教えてくれたのだ

「えっうそ、ダロワイヨなくなる」

と、それはそれなりにショックであった。二階のレストランフロアは静かでエレガントで料理も美味しく、自分へのご褒美の空間だった。自由が丘店は残るといえど、思い出の場所なのだ

次に、近所のカレー屋がなくなった

いかにも脱サラした親父か日本語の不自由なカレーの本場の方が一人でやっているような小さい店で、清潔感はないがアトラクション感があり、いつか一度は行ってみようと思っていたのに

その次に、渋谷マークシティに入っていたイタリア料理の店がなくなった(ことに気づいた)

まだ私にネイルサロンに通うような気概があった頃度々寄らせてもらい、生クリームオンリーで調理しているであろうクリームパスタの、こってりすぎて麺同士がくっついちゃっている味わいが好きだった

まさかと思って同じくその頃利用していた同階のスペイン料理屋をのぞいてみたところランチメニューが一新されていた。つまり、あのころのお気に入りメニューだった牛肉のデミグラスソース煮込みはもうないのだ

徐々にボディーブローが効いてきたボクサーのような足取りで、せめてパンでも買って帰るかとジャンフランソワに寄る。そしてふときいてみる

「バゲットのパテサンドはもうないのですか?」

「そうですねぇ、2年前くらいからやってないですよ」

2年前!!

なんということ。2年も、2年もあのパテサンドがこの世からなくなったことに気づかないまま生きていたなんて

そして決定打は先日の和歌講習の帰り道、歯磨き粉を買おうと有楽町に行ってみたら、ロフトがまるまる無かった

その光景を前に

自分もいつかは死ぬんだな・・・

とまず思ってしまった

店はなくなる。ものはなくなる。すべてのものはいつかなくなる。そうやって、私もいつかなくなっていくのだ・・・

という死んだ目で元ロフトの前に佇んでいると、後ろを通り過ぎた若いにいちゃんが笑って言った

「やっべロフトねえよマジ?俺世間の流れについて行ってねぇわ!」

その軽い調子の言葉は、枯れた柳みたいな気分になっている心にさらに刺さった

あれだ、あれが足りないのだ私には。行ってみたらロフトがなくなっていたことで死を予感するような価値観の暗さだからいまいち幸せになれないのだ。人間の幸せ度としてあの若者よりはるかに私は劣っているのだ

新しいロフトにたどり着いて歯磨き粉を買いながら完全に死んだ目になっていたと思う

しかし本当のトドメの一撃はまだそのあとに控えていた

忙しさでプレイせずにかまけていたソシャゲにログインしたら、お知らせの冒頭が「サービス終了のお知らせ」だったのだ

「嘘でしょ?!」という言葉すら出なかった。死ぬんだ、とはまた思った

まだ配信から一年経ってないのに。その配信も伸びに伸ばして準備したのに。課金もそこそこしたのに。推しキャラの生誕祭もまだなのに!

これは、きっと私が悪いのだ

ダロワイヨに足繁く通わなかった。イタリアンに足繁く通わなかった。ジャンフランソワではしばらくソーセージパンに浮気していた。アマゾンで歯磨き粉を買っていた。推しキャラのマンスリーボイスをチェックするためにしかゲームにログインしなかった

私はそもそも本当に忙しかったのだろうか?

10月5日、品川区のマクドナルドにて、私はベーコンポテトパイを4つ買い求めた。1つは自分の分、3つは仕事先のスタッフの分である

ものはなくなる。それは身にしみた。忙しさにかまけて消費に貢献できなければもっと早くなくなる。この一年に一度しか発売されない大好きなベーコンポテトパイも、去年はなんだかんだ気になりながら食べられなかったのだ

身にしみすぎて、うっかり発売日の1日前にマクドナルドに行ってしまったほどである

とりあえず、今年はベーコンポテトパイを食べたぞ

いずれ来る死の予感の中、パイをかじって一息つく私であった

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